箸に見る男の美学 骨太の“マイ箸ユーザー”になろう 箸専門店「銀座夏野」店主・高橋 隆太氏に聞く、奥深い箸の魅力
2008年2月22日
「OTONANOSNAKA」運動
「OTONANOSENAKA」運動を地球温暖化防止アクションプランにエントリーしました。 僕は、環境に配慮し、社会の規範となるような行動を心がけ、マイ箸を持ちました。
決して、マイ箸を買えと言っているのでは有りません。 社会動向を紹介したに過ぎませんので誤解の無いようにお願いします。 ちなみに僕は古い使い古しの箸を引っ張り出して使っています。
なるべく食べ残しをしないように、朝昼ご飯は食べてません。
エコドライブ(2千回転以下で走行)に気をつけています。
皆さんも、出来る事から始めませんか。 みんなで素敵な社会を造りましょう。
新潟ブロック協議会会長 桐生 伸一

●“マイ箸”という言葉が世間にも徐々に浸透しつつあるようだ。“マイバッグ”と共に手軽にできるエコな活動として、すでに携帯している読者もいることだろう。
●この“マイ箸”というムーブメントを一過性のブームにとどまらせず、箸の文化や美しさにも目を向けてほしいと語るのは、箸専門店「銀座夏野」店主にして、書籍『究極の箸』の著者である高橋隆太氏。
●一見、男性にとって“マイ箸”というと敬遠されそうな向きもあるのだが、さにあらず。知れば知るほど、魅力的な“グッズ”として持ち運びたくなるものだという。
●そこで今回は、箸をスタイリッシュに持ち、いわば男の美学を感じさせるような“マイ箸ユーザー”になるためのポイントと、オススメのお箸を高橋氏に聞いた。奥深い「箸」の世界をぜひ、感じてほしい。
取材・文/イデア・ビレッジ 写真/トヨサキジュン
写真1

“マイ箸”文化と国産割り箸への誤解
――最近、マイ箸という言葉と共に、自分の箸を持ち歩くという人が増えてきたように思いますが、この背景にはどんなことがあると思いますか?
高橋 隆太氏(以下、敬称略):  “マイ箸”という言葉を使い始めたのは僕なのですが、その時は今日のように“マイ箸ブーム”というべき状況が訪れるとは想像できなかったですね。当時は「箸を持つことがカッコいい時代になったらいいなあ」と、ずっと考えていました。
マイ箸を持つ人が多くなった背景には、1970年代以降に外食する機会やコンビニなどが増えて、以前よりもずっと「割り箸」を使う機会が多くなったことがあると思います。そこにもってきて地球温暖化などの環境問題が大きくクローズアップされるようになり、皆さんが割り箸を捨てるたびに、何となく後ろめたい気分になる、ということがあったのだと思います。そんなことが理由で、割り箸を使う機会を減らそうと考える人が増えてきたのが、1つの大きな要因だと思います。
――林野庁が平成17年に公表した数字によると、割り箸は日本国内で年間250億膳です。これを日本人1人あたりに計算すると、1人あたり年間200膳を消費することになります。その分、森林資源を使っている訳で、割り箸は環境破壊の原因の1つだと思っている人も少なくないと思いますが、実際はどうなのでしょうか?
高橋:  「割り箸=環境破壊の元凶」といった見方には誤解が多いですね。割り箸については国産と外国産とを分けて考える必要があると思います。
まず国産の割り箸は、主に奈良県の吉野などで作られています。その原材料には間伐材を使用すると思っている人が結構いるみたいですが、実は間伐材で割り箸を作っている比率は非常に少ないのです。というのは、林業が衰退して間伐材を切らないか、切っても森から運び出すコストが高すぎて、それで割り箸を作ることができなくなっているからなんですね。最近の割り箸の材料は、木材を角材として製材する時に出る三日月状の余剰材です(図1参照)。
つまり、ただ割り箸のために木を切り倒しているのではなく、余剰材を無駄なく有効利用している訳なんですよ。そのような意味で、「割り箸=環境破壊」というのは実は短絡的な発想だということです。
図1 角材製材の際に出る三日月状の余剰材
図1 角材製材の際に出る三日月状の余剰材

――それは意外ですね。むしろ「国産割り箸=資源の有効活用=エコロジー」という側面があるのですか。 高橋:  しかし、国産材の割り箸がコスト面で割高になることから、現在では割り箸の98%は輸入に頼っているのが実情です。その結果として、割り箸製作が中国をはじめ東アジアや東南アジア諸国の森林伐採につながっていることは否定できません。だから、割り箸を語る時に僕はずっと、「国産と外国産と分けて考えて欲しい」と言い続けているんですよ。
日本の食文化は“マイ食具”の方向で進化した

――ところで、そもそも割り箸というのは日本的な文化なのですか?
高橋:   割り箸には、古来日本人が持つ“属人器”という感覚が影響していると言われています。例えば私たちは、食事の際に自分専用の茶碗やお椀、箸を使いますが、この器が特定の人に属すという習慣が“属人器”的な文化なんです。私たちにとっては当たり前のことですが、日本の食文化の特徴の1つなのだそうですね。来客に割り箸を出す、ということも、“これはあなただけのお箸です”という、もてなしの心が隠されていることになる訳です。
この「食器や箸は誰の物か決まっている」という感覚は、マイ箸が受け入れられる土壌になると思います。自分の食具で食べると、食事もよりおいしく感じられますから。
――確かに自分の茶碗に盛られたご飯を自分の箸で食べる安心感…というか落ち着き感はありますね。そう考えると、気持ちよく食事するためにも、マイ箸を持ち歩くことは、日本人にとって自然なスタイルと言えますね。
高橋:  割り箸が普及するのは、そばやうどんなど外食文化が普及し始めた江戸時代頃以来なんです。それより前の昔の日本人は、自分の箸を持ち歩いていたと考えられています。“マイ箸”は、気持ち良く食事するための、昔ながらの知恵とも言えるのではないでしょうか。
――それと、輸入の割り箸は製造過程での衛生や安全管理などの問題が気になります。マイ箸なら、そんな心配をしないで安心して食事ができるのもいいですね。でも「マイ箸を持ち歩く」となると、やはり他人の目も気になりますね。できればカッコいい“マイ箸”がほしいものです。
高橋:  そうなんですよ。マイ箸が一種のブームになることによって、これまで家の中で使われていた箸が、一躍人の目に触れる“ファッショングッズ”のような存在になったわけです。そうなると、「100円ショップで買った箸じゃカッコ悪い」という感覚が出てきて、万年筆や腕時計のように“こだわり”を持って選びたいという人が増えてきました。この現象は、僕はすごく嬉しいことだと思っています。こだわりのある高い製品が売れることで職人の仕事も増え、漆器などの日本の伝統工芸の技術がしっかりと後世まで伝わっていくことに繋がるからです。
写真2 「銀座夏野」店主 高橋 隆太氏
「銀座夏野」店主 高橋 隆太氏

男の“マイ箸”その選び方のポイントとは
――高橋さんは「銀座夏野」という箸専門店も経営されていて、そこには“グッズ”としても魅力的な箸の数々が並び、一口に箸といっても多種多様あることを思い知らされます。では、その中から自分に合ったマイ箸を選ぶポイントを教えて下さい。
高橋:  木の箸は大きく分けると2種類あります。1つは木の肌が露出している木箸。もう1つは漆を何回も塗ることで表面がつるつるしている塗り箸です。
最近はどちらかといえば木箸の方が人気です。見た目が柔らかく、素材感があるからでしょうか。強度といった点からは、やはり塗り箸の方が表面に漆がコーティングされているだけあって傷も付きにくいです。それに、塗り箸は表面が滑らかで口当たりもいいですね。ただ、その分「つるつるして滑りやすい」という声もあります。
――表面の加工のほかに、こだわっておくべきポイントはありますか?
高橋:  料理やTPOによった使い分けを考えてみてはいかがでしょう。箸の太さや角の数が変われば、当然食べやすい料理も変わります。例えば、和食の魚料理でしたら、先が少し細い方が食べやすいですし、見た目のイメージもきれいですよね。一方で麺類でしたら、角が立ち引っかかりがある箸先に角がある箸の方がよいでしょう。箸の角の数も、丸、三角、四角、五角、八角など様々な形がありますので、ぜひ、手に取ってみて自分が使いやすい形を見つけてほしいですね。
――持つことでさりげなく“男のこだわり”を演出してくれるような箸はありますか?
高橋:  男性にとても人気があるのは、使う時に組み立てるタイプの箸です。特に、つなげた時に継ぎ目が見えなくなるような箸は人気があります(下記の「縞黒檀花見箸」を参照)。持ち運びに便利なだけでなく機能性の高い趣向が、男性にはたまらないようです。それと、持ち歩く時には、ぜひ箸袋や箸箱にもこだわって欲しいです。箸を使うたびに人の目に触れますから、洒落たものを使っているとインパクト大ですよ。
写真3「縞黒檀花見箸」
「縞黒檀花見箸」
携帯用に2つに分かれる箸。つなげた時に継ぎ目が見えず、木目までもがぴたりと合うのは感動的。大阪唐木指物師による仕事は秀逸。まさに男の小道具ともいうべき。1万2600円(税込)
「白木箸箱・煤竹箸揃」
「白木箸箱・煤竹箸揃」
杉で作られたシンプルかつ上品な箸箱に、上質な本煤竹の使いやすい細箸をセット。カバンから取り出す姿さえもスマートに見せる、上品な大人の男性の所作が引き立つ逸品。1万3650円(税込)

スマートかつ骨太な“マイ箸”ユーザーへの道
――実際にマイ箸を持ち歩く際に気になるのは、食事の場でスマートに取り出し、使うのはどうすればよいかという点です。相手が持っていない場合、自分1人だけマイ箸を出すのは気が引けるという声もありますが…。
高橋:  あまり難しく考えないのがよいと思います。「最近流行しているから持っている」とか、「面白いから持っている」、「カッコいい箸を見つけたから持ち歩いている」、という“軽いノリ”だったら、相手にも自分にも負担にならないと思います。 それに自分の好きな箸を持てば、自然と食事も楽しくなるんじゃないでしょうか。それが、同席する人にも伝われば、食事の場が変なムードになったりはしないと思いますけど。
――それと、マイ箸をずっと使い続けるためには、使用後のことも気になりますね。汚れたまま持ち歩くことを考えると、だんだん億劫になりそうな気もしますが。
高橋:  最近はマイ箸を洗ってくれるお店も少しずつ増えているようです。私はというと、食べ終わった後にお茶ですすいでさっとティッシュで拭く程度のことが多いですね。きちんと洗った方がよいのでしょうけれど、実はその程度で済ませてしまうマイ箸ユーザーも多いですよ。どうしても気になるというのでしたら、表面がつるつるして拭くだけでも汚れが落ちやすい、塗り箸タイプのものはどうでしょうか。
ずっと使い続けるためにも、そうやってぜひ自分が気に入った、こだわりのある箸をマイ箸に選ぶことをお薦めします。人は自分が大好きな物なら持ち歩きますけど、そうでもない物だとやがて持ち歩かなくなります。そういった意味で、人に見せたくなる箸や箸袋を持つことが、マイ箸を続けるポイントだと思います。第一、持っているだけで気分が良いものですよ。
“マイ箸人口”は少しずつ増えているようだ。高橋氏はしきりに「たかが箸ですが……」と語っていたが、「されどお箸」と付け加えたいほどの奥深い話を聞かせて頂いた。次ページからは、高橋氏が選んだ「男が持ちたい箸」を紹介する。“男の箸の世界”の入り口が垣間見えるだろうか?
高橋氏は常に数本の箸を携帯している。この日は3本の箸が箸袋に入っていた。塗り箸と角張った竹の箸といったように、料理やTPOに合わせて使い分けられるように持ち歩くのが基本だとか。
高橋 隆太(たかはし・りゅうた)氏 経歴
1973年東京生まれ。インターネットベンチャー企業勤務時に、漆器、陶器などの工芸品に魅せられ、1999年に「銀座夏野」をオープン。2001年には「銀座夏野青山店」、 2007年には「銀座夏野 新丸ビル店」をオープン。著書に『究極のお箸』(三省堂)、『美の壷 箸』(NHK出版)にコラムを寄稿。

男が持ちたいマイ箸セレクション!
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スネークウッド八角箸・黒竹箸箱
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夏野オリジナルマイ箸袋
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